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敷居が高い

 
 「敷居が高い」の意味をどのように解釈するか、文化庁の平成20年度「国語に関する世論調査」の結果が発表された。
 (1)「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」で使う人が42.1%
 (2)「高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい」で使う人が45.6%
 これを年齢層別で見ると、(1)と答えたのは40才台以上に多く、それ以下の年齢層との間に格段の差がある。
 「行きにくい」「入りにくい」という行為は同じでも、その理由が全く違って解釈されている。文化庁は(1)が本来の意味で、正解とする。

 しかし、(1)と答えた人でも「敷居とは何か」知らない人が含まれている可能性がある。「敷居」は「鴨居(かもい)」と対になる建築用語である。

 「敷居」は、家の門や玄関,部屋の出入口などの引き戸や障子,ふすまなどを開け閉め       するために床に設置される溝のついた横木のこと。
 「鴨居」は、和室の襖や障子などの建具を立て込むために引き戸状開口部の上枠として       取り付けられる横木。下部に取り付ける敷居と対になっている。
 和風建築における、間仕切りの手法で、「長押(なげし)」や「欄間(らんま)が併用されてきた。

 「長押」は、柱を水平方向につなぐもの。鴨居の上から被せたり、柱間を渡せたりするように壁に沿って取り付けられる。
 和風空間の格式を決定する、最も要の部材とされた。

 「欄間」は、部屋と部屋の境目等で天井と鴨居との間に、採光、換気、装飾等を目的として、障子、格子、透かし彫り等の彫刻を施した板を嵌め込んだもの。
 江戸時代以降には一般住宅にも採り入れられ、現在でも富山県や大阪府などでつくられている。

 これらの様式は、住宅建築の中で発展していったのであるが、「敷居」については寺院建設の中に淵源がある。
 いわゆる古刹と呼ばれる寺を訪ね、本堂へ入るときに経験できる。
 とにかく「敷居が高い」のである。足を高く上げ、ようやく越すことができるほどの高さであることが多い。
 本堂は、当然だがその寺の本尊が安置されている。その場所は最も崇高な場所であるから、入るには身も心もそれに備えなければならない。
 心にやましいものがあれば、「入りにくい」。
 この意味は、(1)のように現在にも定通している。
 
 しかし、住宅様式が洋風化され、玄関に置かれる「敷居」は殆ど影を消した。「引き戸」ではなく、「ドア」になり「敷居」は使われなくなった。
 さらに、部屋の中では、あっても「低い敷居」であり、最近では「バリァフリー」のために撤去されることがある。
 「敷居」は「高くなくなった」状況で、「本来は--」などといってみたところで、理解されるか疑問であろう。

 (2)の回答は、物理的な理解はともかく、心理的な意味は継承していると見られる。
 ふすまで仕切られた大広間と来客中心の住宅様式から、家族と個室を大事にした住宅様式への変化は、時代の流れである。
 
 
和風住宅 2013年版

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