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漢字


 「漢字」は、読んで字のごとく「漢から伝来した文字」を指すといわれる。
 書き文字のなかった奈良・平安時代には「文字の意味」ではなく、「発音」として「漢字」が使われた。いわゆる「万葉仮名」である。
 しかし、この時代の「書く文章」は、今で言う「漢文」であり、「日本語」そのものではなかった。
 「万葉仮名」の「仮名」が「かな・カナ」に略体化され、「漢字と仮名」が混在する文章表記ができあがった。これは誰でも知っている常識だが、この構造に「日本語」のしなやかさがある。

 今「漢字とは何か」と問われたらどう答えればいいのだろうか。
 テレビのクイズ番組として登場するだけではなく、「漢字検定」という資格があり、様々な「漢字」が出てくる。
 そして、旧字体の「漢字」が読めないのは「学力がない」ことのように評価される。

 例えば「戀」という字を書けるか、これは「学力」ではない。
 「戀」は「恋」と略され、旧字は使われなくなった。それが歴史である。
 太平洋戦争後のベストセラー小説に、石坂洋次郎の『青い山脈』がある。映画化され、その主題歌は多くの人々をとらえた。
 その中で、「戀」という字は「糸し糸しと言う心」と書くと教えた先生の話がある。
 だが、今では使われないだけではなく、「いとしい」という言葉さえ理解されない。

 小学校では学年別に習得すべき「漢字」が決められているが、その基本に「当用漢字」がある。「当用」とは政府が決めた「今の時代に使うべき」という意味に過ぎず、字体は簡略化されたものを使う。
 ご本家・中国でも「書き文字の大衆化」のために簡略化が進み、形象文字からの血を引く「漢字」は、跡形もなく変容した。最早「漢字」ではなく「中国字」である。

 現在、「漢字」は、中国・台湾・日本・韓国・シンガポールなどで、文字表記のための手段として用いられてはいる。しかし近年の各国政府の政策で、「漢字」を簡略化したり使用の制限などを行なったり、北朝鮮やベトナムのように、漢字使用を公式にやめた国もある。

 さらに、わが国で作られた「漢字」があり「国字」と言われ、本家の中国にはない文字がある。例えば「榊(さかき)」である。
 現在も神殿や神棚に供えられるもので、「木」偏に「神」を置いた。(さかき)と読むが(しん)と音読はしない。この字の成立と歴史は古い。
 このような例は数多くあり、江戸時代には「異体字・和俗字」とも言われ、新井白石も「国字」として収録した。「当て字」もこの類に入る。

 このように見ると「漢字」は、すでに「日本字」であり、日本語の重要な一部とするのが的を得たものとなる。
 一時騒がれた「漢字文化圏」などという概念は、わが国だけに残された汎用性のない概念となる。

 しかし、「漢字」を使うことにより「日本語」は、表現力と構造的なしなやかさを増すことができた。
 例えば「こと」という言葉を仮名で書かれたら、どの意味に読み取るか。
 事・琴・古都・言・糊塗・殊など全く違う意味がある。
 言葉の前後関係から正しい意味を読み取ることはできるが、「書き言葉」として見ると視覚的にすぐさま意味がわかる。

 アメリカを「米国」イギリスを「英国」と書くのは「和製漢字」で、明治期に作られたものだが、一方で平安期から日常的に使われてきた建築用語の「欄間」や「長押」や「鴨居」は死語になってしまった。辛うじて「敷居」という言葉が残る。
 残ったのは「敷居が高い」という慣用語があったせいで、日常的には、少なくとも「欄間」は消えてしまった。
 これらの用語については、改めて「敷居が高い」のタイトルで紹介したい。

 今日書きたかったのは、「言葉」というより「日本語」の奥深さについてである。
 だが、その意を尽くしていない文章になってしまった。


 
奇妙な国字

奇妙な国字

  • 作者: 西井 辰夫
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎ルネッサンス
  • 発売日: 2009/01/13
  • メディア: 単行本
 

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