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木目(もくめ)

 木目は「モクメ」

 「木目」を正しく「モクメ」と読める人が少なくなった。
 むしろ、今では死語となったのかもしれない。
 そのくせに、家具や調度品に「木目調」と称するデザインにこだわる人々もいる。

 木目には、「板目」「柾目」「杢目」の三種の違いがあるのだが、その違いを理解している人は滅多にお目にかかれない。
 家にせよ家具にせよ、むくの木材を使う文化は、すでに滅びているからである。
 それは、林業の破壊であり、山の文化の否定でもある。

 ここで書きたいのは「林業」のことではない。
 木が持っている「ささやかな楽しみ方」で、その面白さのことである。

 東日本大震災からあと数日で三年になる。
 震災直後、『東北かけはしプロジェクト』の支援で、檜の間伐材から作られたコースターが、ある商品のノベルティとして配られた。
 小さなもので、板目に切られた破片に過ぎない。表面にはまだ大鋸屑が残ったままであった。それを乾拭きしながら、震災の悲惨さを報道で追いかけていた。
 ノベルティを手に入れた翌日、もっと欲しいと思って売り場へ行ったのだが、もう既に売り切れていた。ほっとしたというより、残念だった。
 
 それから三年、乾拭きを繰り返すうちに、コースターの表面は軽い漆を塗ったように落ち着いた艶を出すようになった。
 今では、水気をはじき出すほどのものになっている。ようやくコースターとしての完成品である。
 木が持っている脂肪分が表面を覆ったのであり、その生命力が力強く残っていたからであろう。 
 檜に限らず、間伐材としての評価も受けずに倒れた木がまだ残っているのであろう。
 この楽しみ方を教えてくれたことを感謝する。と同時に有料でいいから、このような素材をもっと広く提供して欲しいと思っている。

 古い寺院を訪ねると「磨き抜かれた板の廊下」に見とれることがある。そして、心の安らぎを感じるのだが、その文化への「かけはし」となってもらいたいものである。


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